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格安葬儀に関する問題点について

投稿が久々になって申し訳ありません。

皆さんこんにちは。

数年前からお葬儀の料金や”直葬の形式”などに関するお問い合わせが増えました。

普通「お寺さんに費用や詳細を聞きづらい」と思われるかもしれませんが、率直なご意見をいただけることが当寺の特色なのかもしれません。

そこで、今回は”格安葬儀”に関する問題点”について書いていきます。

作業化される供養

当寺では、寺院葬という古来より続く本式の葬儀をやや安価で行えるよう徹底的にプランニングいたしました。

この制作にあたっては
・檀信徒様や相談者様の葬儀に関するお問い合わせ
・日本消費者協会や全日本葬祭業協同組合連合会のデータ
・葬儀会館での見積もり料金
・葬儀全体の流れ

これらを考慮し、更には近隣葬儀社様のご意見も頂戴するなど、この数年間”納得のいく本物の葬儀”について調べ尽くしました。

だからこそわかるんです。

格安葬儀の危うさが。

宣伝されているような数十万円の価格で良い葬儀は絶対にできません。

格安葬儀はコスト削減のために、宗教儀礼や地域習慣性を徹底的に省略しております。

「亡き人への儀礼」を省略すると、そもそも何の為の儀式なのでしょうか。

省略された儀式になんの意味があるのでしょうか。

「それでもかまわない」というのならよいのですが、ほとんどの方は故人様を”弔いたい”からこそ葬儀をするのです。

しかし、”費用が捻出できないがために葬儀式を省略する”のであれば、それは大変残念な話ですし、何とか弔いの意志に応えたいと思っています。

ですので、当寺院は寺院葬をより明確にアピールできるようパンフレットや動画を作成しました。

ここでは割愛しておりますが、下記リンクに”直葬”に関する記事を載せておきますので併せてご覧ください。

【直葬について】

格安葬儀を謳うのは仲介業者

「〇〇円でできるお葬式」というCMをよくみます。

しかし、こういう会社のほとんどが単なる電話仲介業者で、その実務をするのは契約した地元葬儀社さんです。

実際に葬儀となった場合、葬儀料金の一割から三割を仲介料として差し引かれるので、地元葬儀社は差し引かれた金額でできる葬儀をするしかありません。

ですので、一概には言えませんが仲介業者に頼らず自分自身で地元の葬儀社に依頼した方がその分良い葬儀できると思います。

何故かといえば、仲介業者は費用のほとんどを広告に充てているのでその分認知度を持っています。

一方、地元葬儀社は地域密着型なので認知度は限定的なものとなります。

この仲介業者の認知度や広報宣伝力によって地元葬儀社は集客率が上がるので、多少の仲介料を払ってでも契約するわけです。

しかし、その契約条件や仲介手数料はバカにならないうえ、仲介業社の謳う葬儀は小規模なものが多い為、一件当たりの単価も下がります。

すると一軒当たりの葬儀の質よりも、数を優先する。

いわゆる回転数を上げるということになります。

回転数を上げるということは、、、

とりあえず受け入れ先を増やすため小さな安置所をたくさん用意し、時間短縮の為できるだけ早く火葬し還骨初七日を省きます。

本来は、葬儀→火葬場→待機(食事)→収骨→還骨→終了

最近は、葬儀→火葬場→待機(食事)→収骨→還骨→初七日

省略は、葬儀→終了

格安葬儀はサービスの性質上、葬儀が終われば会場をすぐに片づけて、次の葬儀の準備ができます。(一時期、祭壇や花を使いまわしで問題となったこともある)

このような方針が葬儀式の簡略化やサービスの質の低下を招いているのです。

実際に、料金を捻出できないので火葬式プランを選ばれたご遺族が、儀式執行当日になって読経をしたいと言われたことがあります。

その旨を葬儀社へ伝えると「時間調整ができないうえ、備品も用意できない。プラン変更であれば可能です」と言われました。

その後も多少の難色は示されましたが、コチラも僧侶として儀式簡略化を黙って見ているわけにはいきません。

火葬場へ出棺するまでの時間はお別れの時間であり、特に制約はなかったので、仰々しくは出来ませんでしたが読経と焼香はいたしました。

サービス業なのはわかりますが、あくまで宗教性のある儀式です。

それに、葬送儀礼は亡くなった方の人生最後のセレモニーです。

これに難色を示す葬祭業者は転職した方がよいでしょう。

葬儀社のスタッフさんも自身の肉親が亡くなられた時は、きちんと弔ってほしいと思うはずです。

もちろん

すべての葬儀社がそうではありません。

その道何十年も勤めてこられた葬儀のプロであり、本当に遺族の方に心から寄り添い悼みを共感し、最善を尽くす葬儀社さんもおられます。

その結果、遺族の方から「火葬だけと思っていたが、やはり枕経やお通夜もしてあげたい」という気持ちが出てきた時、可能な予算の中でプランニングをしてくれるのです。

そのような葬儀社さんは大手よりも、その地域に昔からある葬儀社さんの方が多いです。

町会の役員などもされていたりすると地域のことをよく把握され、顔見知りでもあれば気軽に見積もりや相談にも乗ってくれるでしょう。

そうすると、予算やご親族の心情もわかり高確率で納得のいく葬儀が実現するはずです。

下記に、葬儀社さんの仕事や費用についての記事を貼っておりますので併せてご覧ください。

【お葬式の裏側】

スタッフ教育の低下

葬儀社は格安で回転率を上げる方が収入になるということを書きましたが、これによる弊害はまだあります。

それは、次世代の業界人が育たないということです。

仲介業者と提携した葬儀社だけの話ではありませんが、これまで十数年に渡り色々なところで葬儀を執行してきました。

そして近年、葬儀スタッフの葬儀に関する知識の低下や応用力のなさが目立ちます。

例えば”セレモニーレディ”という方をご存じでしょうか。

葬儀の裏方のようで裏方で無い多肢にわたり活躍する女性スタッフのことですが、その業務は多岐にわたります。

・ご親族の案内役(時間時間での案内、焼香の案内、答礼場の案内)
・会館等の案内役(施設の説明等)
・一般参列者の案内、給仕
・寺院の着替えのお手伝い
・寺院の椅子引き(意外と重要)
・儀式中の案内
・儀式に使用する道具類の準備確認

このように、やることが多いですし葬儀スタッフやご遺族、参列者、僧侶など応対する人の数も多いので、経験や知識、状況判断能力、決断力、協調性が問われる専門職です。

別名、献茶(けんちゃ)さんとも言います。

名前だけだと「お茶をだすだけでしょ」というイメージを持たれる方もおられますが、そうでないことは上記に記しました。

この献茶さんの采配で進行がスムーズに行くかどうかが左右されます。

大手以外の地元の葬儀社さんは、ほとんど派遣でお願いしています。

専門職ですので相応の経費が必要になります。

このように本来”セレモニーレディ”または”献茶”は専門性のあるポジションなのですが、大手になると自社の女性スタッフで賄います。

しかし、当然専門ではなく他の業務をしながらになります。

研修こそある程度するのですが、葬儀業界は経験を積んでなんぼの世界です。

たかだか数時間の研修では献茶さんほど気が回らない方がほとんどです。

また、自社持ちの会館であれば予定通り儀式を執行できるでしょうが、これが自宅やお寺(菩提寺)での葬儀というように場所が変わったとき、その葬儀社の真の実力を垣間見ることができます。

当然、想定外の場所での葬儀に慣れていないのがほとんどなので、グダグダに終わります。

その点、地域密着型の葬儀社は自宅、町会などで使われる会館、お寺、教会など色々なところで葬儀をされているので、想定範囲内です。

想定外の事態も経験と知識でカバーされます。

皆さんはどちらに葬儀を依頼したいですか?

おわりに

ここまで仲介業者と提携葬儀社について書きましたが、最後に言いたいことがあります。

それは

このような状況を”見て見ぬふりをしてきた僧侶も悪い”ということです。

僧侶も葬儀簡略化に伴い、労力は当然減りました。

それを楽だとかいう輩がいるのです。

これは僧侶としての存在意義を根本から覆す考えです。

説得したいところではありますが、現時点ではどうすることもできません。

せめてこの記事を読んでいただいている皆様へはお伝えしておきたかったので書きました。

葬儀は時代に合わせて様々に変化してきました。

現代、これだけ葬儀の形態があるのは歴史上最多ではないかと思います。

だからこそ、しっかり考えて業者を選んでいただきたいと思います。

ご相談は「お問い合わせ」でも受け付けておりますのでお気軽にどうぞ。

以上、格安葬儀に関する問題点でした。


下記リンクに関連記事を載せておきますのでどうぞご覧ください。

「満足のいくお葬式」で弔いを 地域密着の「全葬連」が提供/トラブル回避の葬儀社選び

投稿者プロフィール

石原 政洋
石原 政洋住職
高校在学中に仏道へと入門し、早17年以上携わっております。当寺ではあらゆる角度から仏教の素晴らしさをお伝えするとともに、仏教伝来より培われてきた伝統文化と健康を共有する「体験型」寺院を目指し活動しております。ライフスタイルの多様化により、葬送や納骨などの形式が変化している近年です。終活に関するご相談も随時承っておりますので、お気軽にご相談ください。