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僧侶が考察!!急増するビル型納骨堂の行方

皆さんこんにちは。

ここ数年の間でお墓にまつわる悩みを聞く機会が急増しております。


「一人っ子同士で、お互い実家の墓を何とかしなければいけない。今後どうしたら良いのか?」

「先祖代々の墓が遠方にある。管理ができないので墓じまいしたい」


「嫁ぎ先の墓には入りたくない」といった悩みまでさまざまです。

このようなニーズが増える中、それに合わせようと霊園や寺院もお墓の形やシステムを多様化させ、先祖代々継承するお墓だけでなく、永代供養を採用するお墓も増えてきました。


お墓の形も、墓石を建てる従来のお墓だけではなく、樹木葬や、納骨堂などスタイルが多様化しております。


まったくもって選択肢が増え、逆に選ぶことが難しい時代になっていますね。

このようにお参りをするかたわら、アドバイス等もさせていただき、それらのお悩みや解決方法

つまり、永代供養や墓じまい、改葬に関して当寺ブログ内で書いてきましたが、、、

今回は、その中でも機械式(自動搬送式)納骨堂について注目してみたいと思います。


特に最近は、電車・バスなどの車内広告や地下鉄、新聞でも機械式(自動搬送式)納骨堂の公告を頻繁に見かけるようになりました。


現在大阪市内で販売中の機械式(自動搬送式)納骨堂は33カ所あり、さらに計画中の納骨堂も数カ所あります。


機械式(自動搬送式)納骨堂とはどのようなものなのでしょうか?

納骨堂とは

まずは、納骨堂の定義を整理してみましょう。

「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」では「納骨堂とは、他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう。」とあります。

読んで字のごとく納骨堂は遺骨を納める「施設」となります。

近年では、経済的にも労力的にも「子供や孫に迷惑をかけたくない」という考えを持つ人が増えてきました。

先祖代々への墓地へのこだわりは薄れ、従来のお墓よりも管理などが手軽で契約すればすぐに使える自宅近所の納骨堂を希望される方は確実に増えています。

納骨堂といっても様々なスタイルがありますが、タイプ別に

「墓石型」「棚型」「ロッカー型」「機械式」等に分けることができます。

墓石型

墓石型は、一般墓の変形版。

墓石も色やデザインなど昔に比べると増えました。

屋内屋外問わず「○○家」として先祖代々承継していくことが可能です。

棚型

棚型は、納骨堂や本堂のバックヤードの棚に遺骨が納められ、参拝場所が別に設けられるようなタイプです。

その他に2段構造になっていて、上部が仏壇のような礼拝スペース。

下部が遺骨が納められるスペースなどもあります。

ロッカー型

ロッカー型は、区画(の使用権)を購入し、遺骨をロッカーのような場所に納めるタイプ。こちらも「○○家」として承継することを目的として購入する人が多いようです。

当寺の永代供養納骨壇「アミターユス」の場合、墓石型でかつロッカー型というようにタイプが分けにくいスタイルもあります。

機械式納骨堂

そして近年特に注目されているのが、ICカードをかざすと遺骨が目の前に出てくるビル型の機械式(自動搬送式)納骨堂です。

週末や、お盆・お彼岸前になると、お墓に関する新聞折込チラシが多く入ってますが、最近はもっぱら機械式(自動搬送式)納骨堂ばかりが目につきますが、、、

それは一体どのようなものなのでしょうか。

以下、詳細に見ていきたいと思います。

自動搬送式納骨堂

大阪市内の機械式(自動搬送式)納骨堂の内部構造はいくつかのブースに区切られた参拝スペースがあります。

ICカードをカードリーダーにかざすると、30秒から1分ほどで遺骨が納められた厨子(ずし)や墓石が目の前に現れます。

礼拝場所である部屋は他のご家族と共同か、仕切りで区切られているか、完全個室かで料金が分かれていますが、

礼拝対象のある部屋(墓石や厨子が運ばれてくる部屋)自体は共同です。

その空間に花が供えされているので、持参する必要ありません。

また熱源が電気式の香炉とお香がセットされているのところもあるので焼香(線香)の準備も必要ありません。

手ぶらで参拝でき、草むしりも掃除も不要。

暑さ、寒さ、雷、雪……天候に左右されることなく、さらにバリアフリー。

交通至便なところにありセキュリティ完備と、利便性が高いのが特徴です。

学校や仕事帰りにふらっと立ち寄ることができるのも、納骨堂ならではのメリットでしょう。

ICカードをかざして液晶画面に表示される名前をタッチすると、該当する故人の写真や動画が音声が流れるタイプもあります。

機械ならではの問題点

機械式納骨堂の構造は、物流システムで利用されているものと同様で、物流機器メーカー等が開発に関与しています。

自動倉庫はラック(棚)とクレーン一体構造で立体保管し、天井までの空間は最大限に活用されています。

皆さまが思いつくイメージでは、立体駐車場が近いかもしれません。

そのため、従来のロッカー型の納骨堂と比べて数千単位で区画を設けられる大型のものが多くなっています。

このようなシステムについては、1960年代に国内初納入以来、約50年にわたり、化学・医薬品・食品・飲料・日用品・農作物などさまざまな業界で採用されているため、心情的な面はさておき、技術的には問題ないとされています。

ただ遺骨の場合は、取り出したり動かしたりするようなことはほとんどなく、「一時使用」を前提としたものではないため、大規模改修工事等月必要になったときの対応についてはわかりません。

機械式納骨堂が出回ってから約20年、実際にメンテナンス等で機械の入れ替え等をした前例を聞いたことがありませんが、「お骨を預かる」という永続性が求められるこれから先、その問題が徐々に浮き彫りとなるでしょう。

極端な話、100年後その企業が残っていてメンテナンスをしてくれるかどうかは誰にもわかりません。

下記リンクに自動搬送式システムを施工している業者様のリンクを貼っておきますので、ご参考にどうぞ。

【自動搬送式納骨堂】

選ぶ時の注意点

都市部のような狭い土地における墓地不足解消のために、有効な手段として開発ラッシュに沸いた機械式(自動搬送式)納骨堂ですが、供給過多の兆しが見え隠れしています。

販売業者へこっそりリサーチしたところ

「機械式(自動搬送式)に対する抵抗感を持つ人が以前と比べて少なくなっている」

「最初から納骨堂と決めて見学に来る人が多い」

このように好感を示す一方で

「機械式(自動搬送式)の場合、早く契約したからといって参拝条件が異なるわけではないため、使用する段階になってから購入しても遅くない」

「後からできる機械式(自動搬送式)納骨堂のほうが最新でシステムも設備も安心」

「お参りするだけの空間にそこまで設備が必要か」

このように早めの購入を避ける傾向があったり、それら設備が果たして必要かという見学者様のお声も聞けました。

結果、莫大に投資した分の回収が遅れ販売方法や経営の見直しを迫られ、契約者さんと業者のトラブルが増えているのも実情です。

機械式(自動搬送式)では、いずれ100年以内にビルの立替が必要です。

これはマンション問題と同じであり、建替え時に遺骨をどうするのかの定めを明確にしておく必要があります。

機械式(自動搬送式)の場合には、立替計画等が定まっていない限りは、相続人等が使用権を承継することは難しく、墓地委託型の契約であると認定するべきだと考えます。

つまり契約書にて、「契約期間」が明記され、「その契約期間後に、どのように改葬するのか」が明記されかつ、一般の利用者十分に説明されているのであれば問題ありません。

しかし、「墓を代々墓が子孫へと承継できる」ような宣伝をしながらも、墓地の経営者の判断で自由に改装できることになっているケースでは、法律的な問題があります。

建設時の費用回収方法は?

メンテナンス費用は?

耐用年数は?

それらの費用はどこからどのように回収されるのか?

納骨堂管理費が将来にわたって一定なのか?

耐用年数が迫った時の遺骨の移動や管理方法についての詳細は?

これらの問題を考慮するとよいでしょう。


以下、ビルの耐用年数について書かれたブログを貼っておきますので、気になる方はどうぞ。

【建築業界ニュース様】より

納骨堂選びの心構え

機械式のシステム自体は、どの納骨堂もさほど大差がありません。

全体の雰囲気、参拝スペースに配置された墓石のデザインや隣のブースとのパーテーションや、参拝までの待合スペースの設計などで他との差別化を打ち出していますが、選ぶ側の決め手としては

「立地」と「料金」という声が多いようです。

機械式(自動搬送式)納骨堂の費用は、一区画60万円から150万円。

これに年間管理料が5千円~2万円程度かかります。

近年販売される自動搬送式納骨堂の販売価格は60万円台、70万円台が増加していて、高くても100万円を超える値付けをしてくる納骨堂は少なくなりました。

納骨堂の多くは、事業主体が宗教法人(寺院)で、本堂が併設されているところが多いと思います。

しかし、宗教法人が営利法人へ販売や広報を委託している場合もあり、非営利事業のはずがサービス業に成り下がっているケースもあります。

販売時には、「宗旨・宗派不問」をうたっていたとしても、宗教施設であることにかわりはないので、基本的にその宗旨・宗派の教義に理解のあることが前提となります。

檀家という結びつきではないにせよ、寺院や住職とは納骨堂を通じてお付き合いが発生してきますので、「この寺院と長くお付き合いをしていく」という心構えは必要になります。

まとめ

近年の需要に合わせて建設されてきた自動搬送式の納骨堂。

多死社会といわれるようになり需要見込みがあるとわかると相次いで建設され、供給過多になりつつあります。

輪をかけるように納骨堂販売に長けた企業が、寺院に納骨堂建設を持ち掛けます。

昨今は離壇もあり、寺院も安定経営を求めて納骨堂の運営に舵を切られます。

そのあおりを受け、過剰なサービスなならないか心配しております。

何故なら、その過剰サービスの対価は契約者さんの管理料から捻出されることになるからです。

このようにならない為には、やはり従来の納骨堂が一番であると私は思います。

墓石の耐用年数は定かではありませんが、少なからず数百年は持ちますし、大規模な修繕やメンテナンス費用もかかりません。

納骨堂に併設されているお寺であれば、休憩場所も本堂で十分なはずです。(そもそもそこまでゆっくりするのかも疑問です)

無理のない運営方法で永続的に管理するシステムが構築されている納骨堂(お寺)ほど、大事なご遺骨を納める場所に値するのではないでしょうか?

以上、僧侶が考察!!急増するビル型納骨堂の行方でした。

納骨堂について、下記リンクでも解説しておりますので併せてご覧ください。


【永代供養納骨壇 個別区画編】

【永代供養納骨壇 合祀編】

【納骨堂 解説】

投稿者プロフィール

石原 政洋
石原 政洋住職
高校在学中に仏道へと入門し、早17年以上携わっております。当寺ではあらゆる角度から仏教の素晴らしさをお伝えするとともに、仏教伝来より培われてきた伝統文化と健康を共有する「体験型」寺院を目指し活動しております。ライフスタイルの多様化により、葬送や納骨などの形式が変化している近年です。終活に関するご相談も随時承っておりますので、お気軽にご相談ください。