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これですべて解決!分骨の証明書から手続きと費用まで

皆さんこんにちは。

日ごろの法務の中でお問い合わせや質問から話題を取り上げてブログに書いていますが、今回ご紹介するのは「分骨」です。

自宅供養、手元供養、永代供養などの選択肢が増える中、それに応じて注目されている方法です。

この記事では、分骨の意味をはじめ、必要な書類、また、その書類の発行方法などについてご紹介していきます。

分骨とは

分骨とは、亡くなった方の遺骨を2箇所以上の別々の場所に納骨し供養することを言います。

後で詳しく書きますが、仏教においては古くから分骨し納骨するという習慣がありました。

近年では、田舎のお墓になかなか参拝できないため、近くの納骨堂などに納骨する墓じまいや、両親の遺骨を親族で分けてそれぞれが自宅で供養するという方、あるいは、故人の希望で遺骨の一部を散骨される方、分骨を手元に置いて手元供養する方など、生活様式の変化によって分骨を希望する方が増えています。

分骨は縁起が悪い?

分骨はよくない、縁起が悪いなどと言われることがあります。

それは、日本においては、遺骨は1箇所に納めることが一般的とされてきたからです。

これは、遺骨にまだ本人の魂が宿っているという考えや、仏教の教えである輪廻転生からきていると考えられています。

分骨することで、故人の魂や体が引き裂かれ魂が迷子になったり、故人の魂が、輪廻転生で新しい肉体を得て生まれ変わる時に五体満足にならないという理由です。

他にも、家名が違う者同士をお墓に入れると喧嘩をするというのもあります。

しかし、これは迷信です。

実際には、故人が亡くなってから四十九日経った後の遺骨に魂は残っていません。四十九日を境に、この世に残っていた故人の魂は次の世に旅立つからです。

浄土真宗に至っては「往生即成仏」といって、この世の縁が尽きたその瞬間に極楽浄土へと生まれると説いています。

そのため、そもそも故人が分割されてしまうことはありませんし、魂が迷子になったりすることもありません。

また、生まれ変わる時に五体満足にならないということも、もちろんありません。

分骨は残された人の心の支えとなるもので、実はお釈迦様の時代からあるものなのです。

実際に、インドにはストゥーパというお釈迦様のお骨を納めた塔がいくつもあります。

お釈迦様の遺骨が分骨という形で納められていて、現在でもそれ自体が仏教徒の礼拝の対象とされております。

また、関西では特に比叡山や本願寺飛地境内の大谷本廟など各宗派の本山が近いということから、積極的に分骨するという習慣が残っています。

分骨に関する法律

分骨に関する法律には、「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」に沿って行われています。

その中で、分骨に関して記載されているのは第5条です。

以下引用

第5条 墓地等の管理者は、他の墓地等に焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵を委託しようとする者の請求があったときは、その焼骨の埋蔵又は収蔵の事実を証する書類を、これに交付しなければならない。

2 焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵を委託しようとする者は、墓地等の管理者に、前項に規定する書類を提出しなければならない。

3 前2項の規定は、火葬場の管理者について準用する。この場合において、第1項中「他の墓地等」とあるのは「墓地等」と、「埋蔵又は収蔵」とあるのは「火葬」と読み替えるものとする。

要するに

・火葬場(斎場)あるいは遺骨が納められた墓地の管理者(霊園・寺院)は、必要に応じてその遺骨が分骨されたものであることを証明する証明書を発行しなければならない。

・また、分骨を受け入れる側も証明書が無ければ受け入れてはならない。

ということになります。

証明書については、後ほど詳しく書きます。

墓地、埋葬等に関する法律施行規則については下記リンクよりご覧いただけます。

【墓地、埋葬等に関する法律施行規則】

分骨は遺族間での話し合いが大切

遺骨の管理や処分に関する最終決定権を持っているのは、原則一人です。

この権利者とは、「祭祀承継者」です。

祭祀承継者とは、祭祀財産を承継した人のことを言います。

祭祀財産とは墳墓、祭具、系譜など家の祭祀に関わるものであり、遺骨もこれに入ると考えられます。

最終的に分骨するかどうかは祭祀承継者が決めることができますが、独断で進めてしまうと分骨を嫌がる親戚から後にクレームを受けるなどのトラブルになることがあります。

また、せっかく分骨しても、受け入れ先のお墓の所有者や管理者が許可しないと、遺骨を入れてもらえません。

分骨は、故人や受け入れ先のお墓の関係者全体の合意の上で進めましょう。

なお、祭祀承継者に関しては、民法で以下のように決められています。

(祭祀に関する権利の承継)

第897条
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

要するに

・祭祀承継者は故人が指定した人になるので、必ずしも長男である必要はありません。

・故人の指定が無ければ慣習に従い、それも分からなければ家庭裁判所に決めてもらいます。

ですが、故人の指定がない時は、実質遺族の話し合いで祭祀承継者を決めるのが一般的です。

一般的に今の日本では、現在の祭祀承継者に指名をされると、「辞退できない」となっています。

祭祀承継者は生きている内に口で伝えることも多いですし、遺言書に残すケースも増えました。

本人にその意思はないのに、全ての責任を一人で負うことになり、苦しまれることもあります。

ですので、ここは慎重に親族間で話し合い、承継の意思がない場合は、墓じまいや永代供養などの選択肢をお伝えしております。

詳細は下記リンクより

【初心者必見! 永代供養墓の選び方】

分骨を可能にする証明書とは

分骨するときに必ず必要なものが分骨証明書です。

分骨に関する法律の欄でも紹介したものがこの分骨証明書になります。

分骨証明書には、一般的に故人の名前や性別、死亡年月日などが記されています。

分骨証明書は、分骨する時ではなく、分骨をどこかに納める時に必要になります。

分骨を納骨せずに、手元供養をする場合には注意が必要です。

手元に遺骨がある間は分骨証明書は必要ありませんが、後日、何らかの理由によって遺骨をどこかへ納めなければならなくなった時には分骨証明書が必要になるからです。

分骨証明書は、当面必要ないという場合でも、後々のことを考え取得しておき、大切に保管しておくようにしましょう。

分骨証明書について

では、分骨証明書はどこでもらえるのでしょう。

ここでは、分骨証明書をどこでもらえるのかご紹介します。

火葬時に分骨する場合

墓地、埋葬等に関する法律施行規則の第5条3項に、「火葬場の管理者について準用する」との記載があります。

つまりこれは、「遺骨を分骨し、他のどこかへ納めたいという申し出があったときには、火葬の事実を証明する書類を、火葬場の管理者が発行しなさい」ということを規定しています。

火葬場で発行されるのは「死体火葬許可証」という証明書になります。(色々な名称有)

この火葬証明書(分骨用)を発行してもらう場合は、直接火葬場に申し出ても良いのですが、事前に葬儀会社に相談しておくと発行もスムーズに行われるでしょう。

一度納骨した遺骨を分骨する場合

既にお墓に埋葬してあるご遺骨を分骨する場合は、墓地の管理者に分骨の意思を連絡し、分骨証明書を発行してもららわなければなりません。

このことは、墓地、埋葬等に関する法律施行規則の第5条に規定されています。

また、お墓からご遺骨を取り出す際には、墓地の管理者の立ち合いが必要になり、その立ち合いのもとに分骨証明書が発行されるようになります。

当寺も分骨の作業を見届けた後、証明書の発行をしております。

ちなみに、分骨証明書がどのようなものなのか参考のために見本を下記に添付しておきます。

分骨証明書を紛失した場合

しばらく遺骨を手元に置いて手元供養を行い、その後、お墓に納骨するという時には分骨証明書が必要になります。

しかし、長年手元供養をしている間に、分骨証明書を紛失してしまうということも考えられます。

では、分骨証明書を紛失してしまった場合、どうしたら良いのでしょうか。

実は、分骨証明書は再発行をしてもらうことができます。

分骨前のお墓の管理者へ分骨証明書の再発行手続きを行えば、再発行してもらえます。

故人の氏名、亡くなった日、火葬日がわかれば、何年経っていても、比較的スムーズに再発行してもらえます。

ただし、亡くなった日や火葬日がわからないと再発行手続きに時間がかかることもあります。

特に、亡くなった日がはっきりわからない場合は再発行が困難になる場合がありますので、亡くなった日や火葬日は、必ず控えておくようにしましょう。

分骨証明書にはいくらかかる

分骨した遺骨をお墓に納める時に必要になる分骨証明書が必要なことはご理解いただけたと思います。

では、その分骨証明書を発行するには、どの程度の費用がかかるのでしょう。

火葬場で発行する場合

火葬場では、「死体火葬許可証」などの火葬証明書(分骨用)が発行されます。

この、火葬証明書(分骨用)は、自治体にもよりますが1通数百円程度で発行してもらえます。

また、分骨を希望する人が複数人いる時には、その人数分を発行してもらいましょう。

詳しくは各斎場へとお問合せください。

大阪市立の斎場は下記リンクよりお問い合わせできます。

納骨後に発行する場合

納骨後に発行される分骨証明書は、お寺やお墓の管理事務所など、お墓を管理しているところに発行をお願いします。

発行にかかる費用は、火葬証明書(分骨用)と同様、1通数百円程度です。

ただし、骨壷を取り出すためには、墓石を動かす必要があります。

その時は、石材店に墓石を動かしてもらうよう依頼することになります。

地域にもよりますが、石材店への費用は、2万円から3万円が必要と考えておきましょう。

また、骨壷を取り出す前には閉眼供養が、分骨した後に骨壷を元に戻した後には開眼供養が必要になります。

その時には、お布施も必要になります。お布施の相場は1~3万円と考えておきましょう。

こんな時も証明書は必要?

すでにご紹介したとおり、墓地、埋葬等に関する法律施行規則では、分骨した遺骨を納める時には、分骨証明書が必要であると規定されていますが、分骨した遺骨を納める場所については特に明記されていません。

分骨前のお墓以外のお墓や納骨堂に遺骨を納める場合は、分骨証明書が必要なことは理解できます。

しかし、分骨前のお墓に遺骨を戻す時には、分骨証明書は必要なのでしょうか?

一度分骨したお骨をお墓に戻すときは証明書が必要か

一部では、分骨前のお墓に遺骨を戻す時は、分骨証明書がなくても、その遺骨が事件性のないものであることが証明できれば遺骨を納めることができるとも言われています。

しかし、厳密には、分骨前のお墓に分骨した遺骨を戻す場合であっても、分骨証明書がなければ納めることができないと思ってください。

特に、公営霊園などの場合は管理が厳しいため、分骨証明書がないと遺骨を元のお墓に戻すことはできないと考えてください。

分骨証明書がいらない場合がある

墓地、埋葬等に関する法律施行規則では、「ほかの墓所などに分骨すると申請があった人には、書類を発行しなさい」、また、「ほかの墓所に骨を納めるときは書類を提出しなさい」と規定されています。

お墓から遺骨を取り出し、分骨するという行為については、法律上の規制はありません。

では、分骨を手元供養したり、散骨する時には、分骨証明書は必要なのでしょうか。

結論としては、手元供養する時や散骨する場合、現法律では分骨証明書は要らないということになります。

まとめ

以上、分骨証明書に関することについてご紹介してきました。

手続きに関しては、改葬などのように複雑ではありませんが、紛失され故人様の詳細が分からなくなった場合には注意が必要です。

紛失などの問題を防ぐためには、生前から明確に分骨が必要かどうかを考え、いざとなった時に葬儀社さんや斎場へその旨を伝えておくことです。

各証明書は骨箱や仏壇の中など、わかりやすいところに必ず保管しておきましょう。

以上、これですべて解決!分骨の証明書から手続きと費用まででした。

わからないことがあれば、下記リンクよりお問い合わせください。


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投稿者プロフィール

石原 政洋
石原 政洋住職
高校在学中に仏道へと入門し、早17年以上携わっております。当寺ではあらゆる角度から仏教の素晴らしさをお伝えするとともに、仏教伝来より培われてきた伝統文化と健康を共有する「体験型」寺院を目指し活動しております。ライフスタイルの多様化により、葬送や納骨などの形式が変化している近年です。終活に関するご相談も随時承っておりますので、お気軽にご相談ください。