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これからのお仏壇について

今回はお仏壇について書きます。

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金仏壇

普段、私は「月参り」といって、毎月ご門徒さん(檀家)のお家へ伺い読経しています。関西、特に大阪では当たり前の風習なのですが、全国的には珍しいようです。読経後に終活相談や身の上話、法話などをさせていただいております。しかし、近年は「お仏壇の継承が難しい」という相談も多くなってきました。主な原因としては、核家族化により「お仏壇の世話(供養の仕方)がわからない」「マンションで和室や仏間がない」「信仰していないので邪魔」「そもそも高い」など理由も様々です。

今後の社会情勢を見越して、お仏壇との関わり方を考えたいと思います。

仏壇って?

読んで字のごとく仏様を祀る壇であり、仏教徒にとっての礼拝施設です。
仏壇は各家にあるものと思われるかもしれませんが、実はお寺にある須弥壇(しゅみだん)が本来の仏壇です。

須弥壇は、お寺の本尊を安置するために本堂内陣の一段高い場所に設けられています。
仏教やヒンドゥー教で世界の中心にあるとされている想像上の山、須弥山を模したものです。
そしてお寺の内陣を小型化したものが、各家庭にある仏壇なのです。

ですから、仏壇は仏様とご先祖をお祀りする家の中にある小さなお寺です。
日本では古くからご先祖をお祀りする習慣がありました。日本最古のお仏壇としては、奈良の法隆寺にある「玉虫厨子」でしょう。飛鳥時代推古天皇の愛用品で国宝として知られています。

浄土真宗の仏壇の歴史としては、本願寺宗主第八代蓮如上人からと思われます。

蓮如上人の法話集である『御一代記聞書』には、他宗の木像や絵像本尊と比較して、浄土真宗の本尊は、南無阿弥陀仏の名号であると明快に教示されています。

他流には「名号よりは絵像、絵像よりは木像」というなり。
当流には「木像よりは絵像、絵像よりは名号」というなり。
(御一代記聞書)

真実の弥陀の救いを知らない人たちは、名号よりも絵像がよい、絵像よりも木像本尊がありがたく拝めるからよいと言っている。だが親鸞聖人は、木像より絵像、絵像よりも名号が浄土真宗の正しい御本尊であると教えられている。

 当流と他流を比較され、誰が読んでも、間違えようのないように教えられています。弟子や門徒さん方にも御名号を与えられたことは、晩年の蓮如上人が、「私ほど数多くの名号を書いた者はいないだろう」と仰った記録や、各地に多数、蓮如上人直筆の御名号が現存することからも明白です。このようにして、全国各地の門徒さんへ行きわたり、お仏壇としての機能を果たしていったのです。

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蓮如上人筆 南無阿弥陀仏

仏壇の種類

仏壇の種類を見ておきましょう。
仏壇の種類は大きく、伝統的な金仏壇と唐木仏壇、それに比較的新しいモダン仏壇に分けることができますが、今回は浄土真宗でポピュラーな金仏壇のみご紹介しておきます。

金仏壇は、木地である桧・松・杉などの木材に漆を塗り、その上に金箔や金粉を施した仏壇です。
伝統的な工芸技術である彫刻・蒔絵・塗り・彩色・錺金具(かざりかなぐ)などの技術が駆使されています。

伝統的工芸品に指定されている金仏壇の制作地は国内に15箇所もあります。
それぞれ独特の技法を用いており、仏壇の中でも最も高価と言われる豪華で荘厳な作りです。

金仏壇の産地は国内に他にも多数ありますが、近年中国やベトナムなど海外でも作られています。

国産品は質が良いものが多く、最低でも数十数万円、平均的には100万円以上するものが多いです。
400万円~500万円前後のものも珍しくなく、伝統工芸品になると数千万円するものもあります。

金仏壇は阿弥陀如来がいらっしゃる極楽浄土を象徴しており、特に浄土真宗で使われることが多いです。
ただし、浄土真宗といっても「十派」存在しているので注意が必要です。また、金仏壇は浄土真宗以外の宗派の方でも安置することができます。

仏壇の引っ越しの流れ

転居などの際には仏壇はどのようにしたらよいのでしょうか。
ご先祖をお祀りする仏壇ですから、おろそかに扱うことはできません。
仏壇の引越し方法や注意点について、ご説明します。

引越し方法

仏壇の引越しは、すべて自分でやる方法と専門業者などに依頼する方法に大別できます。

自分でやる方法は安価に済みそうですが、高価で大切な仏壇をトラブルなく移動させることは結構大変なことです。
他方、専門業者などに依頼するときは、必ず複数社から見積もりを取りましょう。
費用はこちらの方が高くなりますが、不用品は自分で処分するなどの工夫で抑えることも可能です。

大事なことは仏壇を損傷せずにきちんと運ぶことです。
信頼でき、安心できる方法を菩提寺の住職に聞くのがよいですね。

魂抜き・魂入れについて

仏壇は最初に安置するときに、通常であれば僧侶が魂入れをしているはずです。
ですから、引越しする際は、まず魂抜きをし、引越し先で改めて魂入れをすることになります。

魂抜きのことを閉眼供養(へいがんくよう)、魂入れを開眼供養(かいげんくよう)といいます。
それぞれどのようなものか簡潔にご説明します。

閉眼法要

魂抜きは別名、お性根抜き、閉眼法要とも呼ばれています。
魂が入ったままの仏壇を荷物のように扱うのは、ご本尊やご先祖に申し訳なく躊躇しますよね。
魂抜きは魂を浄土に返し、魂を抜いた後の仏壇や位牌などを単なる物に戻す儀式です。

ご先祖に感謝し、気分を新たにして転居先に向かうためにも、魂抜きは大切な儀式です。

浄土真宗では、故人は浄土で往生しこの世に魂はないと考えますので、魂抜きは行いません。
ただその代わりに、お仏壇のご本尊を一時的に移動させる遷仏法要をします。

開眼法要

仏壇は買ったときはただの入れ物です。
僧侶に開眼法要(開眼供養)を行っていただいて、はじめて仏壇や本尊に魂が宿ります。

浄土真宗の場合、お仏壇に新しくご本尊をお迎えする時や引越し後にご本尊を再びお迎えする時は、開眼法要(開眼供養・魂入れ)ではなく、入仏式を行います。

お布施について

開眼供養や閉眼供養は、お寺やお坊さんに依頼しますので、通常の法要と同じようにお布施をお渡しします。
お布施の相場は1万円~5万円です。

仏壇処分のポイント

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仏壇の承継者がいない、転居先が手狭などの理由から、仏壇を処分せざるを得ないこともあります。
そのようなとき仏壇をどのようにしたらよいのか、悩ましいですね。
仏壇を処分する際は、魂抜きをして、位牌を整理し、仏壇を処分するという段取りが一般的です。
自治体によっては仏壇を回収するところもありますが、ごみとして出すことは躊躇されます。

また仏壇が古くなってしまい買い替えたいという方もいらっしゃるかと思います。
その際にどのような手順で購入まで至ればよいのか知っている方は少ないでしょう。

ここでは仏壇の処分・買い替えの流れやポイントについて解説していきます。

仏壇処分

菩提寺にお願いをする

菩提寺がある場合、閉眼供養のこともありますので、菩提寺にお願いをするのが良いです。
菩提寺の場合は、仏壇を閉眼供養した後、引き取っていただけることもあります。当寺では、ご門徒さんに限りご本尊のみお引き受けしております。菩提寺以外のお寺でも、仏壇の供養や引取り処分をしてくれることもあります。

仏具店にお願いをする

仏具店では、仏壇の引き取り・処分サービスを行っているところも多いです。
仏具店で、閉眼供養も含めてすべてお願いできる場合も多いです。

専門業者にお願いをする

仏壇の整理や処分を行う専門業者もあります。
仏壇の魂抜き・回収処分だけでなく、仏壇の中身の整理もしてもらえます。

しかし、中には仏壇を引き取るだけで、閉眼供養せずにゴミとして廃棄してしまう業者もいます。
専門業者に依頼する場合は、供養証明書や証拠写真などで処分状況をチェックできるか、事前に調べて確認することも大事です。

自治体にお願いする

奥の手ですが、粗大ごみとして処分することも可能です。
この場合は上記のものに比べて比較的費用を抑えられるという点と、面倒な手続きを行わずに済むという点があります。

ただし、自治体によっては仏壇の処分を引き受けていない場合もあり注意が必要です。
また仏壇の処分に関して周囲の目が気になってしまうという点もあります。

まとめ

  • 仏壇はお寺にある須弥壇を小型化したものである。
  • 仏壇は仏様とご先祖をお祀りする家の中にある小さなお寺と考えることができる。
  • 仏壇の種類は、金仏壇、唐木仏壇、モダン仏壇、に分けることができる。
  • 金仏壇は、金箔などを施し伝統的な工芸技術が駆使されており、最も高価である。
  • 仏壇を引越しする際は、魂抜きをし、引越し先で改めて魂入れする。
  • 仏壇を処分する際も、魂抜きしてから、位牌などを整理して処分する。
  • 仏壇の処分は、菩提寺か仏具店・専門業者にお願いすることが多い。

最後に

生活様式の変化によりお仏壇の承継は難しくなってきていると思われます。かつての昭和に比べて家族構成や、賃金、物価など変化しているわけですから、供養の仕方も変化するのは当然であると思っています。すべては「変わらぬものは何一つない」という仏教の根幹思想である諸行無常でもはっきりとしています。

それでも、一定数は新たにお仏壇を購入される方もいらっしゃいます。特に若くして亡くなられた方や、子供さんのご供養のためにと購入されるケースが多いです。ですので、「仏壇はいるか?いらないか?」という問いに関しましては「人それぞれ」としか言いようがありません。

しかし、冒頭でも述べたようにお寺にある須弥壇(しゅみだん)が本来の仏壇ですから、お仏壇の承継や購入が難しい方は是非、菩提寺さんの本堂をご自身のお仏壇として礼拝していただけたらと思います。

今回は、お仏壇に関する記事でした。このような内容は毎月20日の「終活セミナー」でもお伝えさせていただいておりますので、是非お越しくださいませ。

ご予約は下記リンクから

https://docs.google.com/forms/d/1bOrPG1HL1TP_UzqqICc00A9XplVMrXiSPmTW8uNa72Y/edit

投稿者プロフィール

石原 政洋
石原 政洋住職
高校在学中に仏道へと入門し、早17年以上携わっております。当寺ではあらゆる角度から仏教の素晴らしさをお伝えするとともに、仏教伝来より培われてきた伝統文化と健康を共有する「体験型」寺院を目指し活動しております。ライフスタイルの多様化により、葬送や納骨などの形式が変化している近年です。終活に関するご相談も随時承っておりますので、お気軽にご相談ください。