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100歳まで歩いて通えるお寺プロジェクト

当寺では、2021年4月より月一で行っている活動があります。

その名は【100歳まで歩いて通えるお寺プロジェクト】(100PJ

2021年は緊急事態宣言中に本堂でココカラ相談所21回、ココカラYOGA30回を開催し、合計100名以上のご参加をいただきました。(2023/1月時点)

そのほとんどがご門徒(檀家)さん以外の地域の方でした。

ご参加いただかなくとも少しずつ地元の皆さまへと活動が認知されております。

2023年1月には大阪府健康づくりアワード地域部門優秀賞を受賞いたしました。

大阪府では、企業における健康経営の取組みや、職場や地域での健康づくり活動が、業績や企業価値の向上、地域の活性化につながるものと考えています。府内におけるこうした自主的・主体的な健康経営や、健康づくり活動の奨励・普及を図ることを目的として「大阪府健康づくりアワード」を実施し、積極的に健康づくり活動を行っている団体を表彰します。

大阪府HPより

詳細はコチラ↓

https://www.pref.osaka.lg.jp/kenkozukuri/award/

地域部門 優秀賞受賞

この記事では、当寺の”100PJ”について詳しく書いております。

【公式Facebookグループ】

https://www.facebook.com/groups/452130002800318

2022年10月には地域拡大版イベントも開催。

地域 拡大版プロジェクト

はじまりは

お寺内にジムを併設し、カラダの専門家と日々関わっている本格派の私ですが、実は幼少から20代後半まではスポーツが苦手でした。

今でも、野球やサッカーなどの球技、チームプレイを要求されるスポーツは苦手です。

そんな私が何故このようなプロジェクトをはじめたのかというと

ズバリ”坐骨神経痛”になったからです。

以下、Wikipediaより引用
坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)とは、腰から足を下っていく痛みを特徴とする病状である。あくまで症状であり、病名ではない。人の体においてさまざまな原因により、坐骨神経が刺激されることに起因する神経痛である。痛みは、足の後ろ、外側、前方などでも起こる可能性がある。発症は重いものを持ち上げるような活動の後に突然起こることが多いが、徐々に発症することもある。痛みはよく、撃たれるような感覚と言われる。通常、症状は体の片側だけに現れる。しかしながら特定の原因によって両側に痛みが生じることもある。腰痛が時々見られる。患部の足、足のさまざまな部分などで脱力感やしびれが生じることもある。 以上

私の場合は、左側の首から腰にかけて慢性的な鈍痛に悩まされていました。

横になっていても、座っていても、歩いていても常に痛い状態が1年近く続いて、お勤めなどにも軽く支障をきたすほどでした。

でも、自分自身では「まだ20代で腰痛は恥ずかしい」と無理をして、ずっと我慢をしていたのですが、ある日突然背中に激痛が走り息をすることも困難になりました。

2日程寝込んだ後、これはただ事ではないとすぐ病院へ行き検査を受けましたが、検査の結果は「骨や神経に異常はない」。。。

内心「そんな筈はない」と言いたいところでしたが、医者の診断が間違っているとも思えず、色々と生活習慣などについて話してみました。

すると、「筋力が衰えているので運動してください」と一言。

CT画像やカルテを診ながら説明されましたが、その時の私の心境としては”突拍子もない発言”という風に受け取ってしまいました。(ごめんないさい)

生活習慣の改善

私は僧侶ですので普段は立っていることより座っていることの方が多いです。

法事・事務作業・雅楽・生花、というように1日のほとんど座りっぱなしです。

整体に通ったりネットで調べたりしているうちに、この生活習慣が首からお尻にかけての筋肉の凝りに繋がり痛みを生じていることがわかりました。

そのうえ骨格(体)を支えるはずの筋力が不足していると言われましたので、より症状に拍車をかけていたということです。

そこで、まずはじめたのが”自重トレーニング”でした。

いわゆる腕立て・腹筋・背筋・スクワットという学生時代の体育の時間にやっていたやつです。

これを各10回×3セットし、2日置きに続けました。

この話をするとよく「住職さんだからできるんだよ」とか「私には無理」とおっしゃられますが、確かに「痩せたい」とか「健康になりたい」という思いで始められる方ならばそうかもしれません。

しかし、私の場合は「やらないと痛みが治らない」という恐怖観念がありました。

つまり、”否応なしにしなければならないリハビリ”と一緒です。

皆さまも治療やリハビリなら嫌でも続けると思いますが、そのような状況でした。

以上、このような経緯を経まして今では慢性的に痛むことはなくなりました。

しかし、依然として僧侶の生活習慣は続いておりますので注意は必要です。

芽生えたアイデア

私自身このような経験から学んだことがいくつかあります。

それは

・自分と同じような悩みを持った人はたくさんいる

・運動不足は生活習慣病などにもつながる社会問題である

・運動がいいことは知っていても、なかなか行動には移せない

・健康や運動に対するノウハウはたくさんあれど、どれが自分にあっているのかわからない

ということです。


そこで

・病院や診療所以外でもっと気軽にヘルスケアを知ることのできる場所はないのか?

・頼れる人が自分の生活圏のすぐ近くにいてくれたらどうか?

・一人は無理でも、皆で一緒にやったらできるかも?

このような環境を日本全国津津々浦々ある”お寺で”できまいか?と考え始めるようになりました。

ひと昔前、地域のお寺は信仰の場であったことは言うまでありませんが、その他にも寺子屋としての学びの場や身近な悩みを相談できる場など様々な役割を担っていました。

つまり、かつてのお寺は「老若男女を問わず誰もが自由に行き来できる共有地(コモンズ)」であったと考えます。

一方で、当寺へこられた19名を対象に私たちが行ったアンケート調査によると、地域にあるお寺のイメージは、お葬式が最も多く34.4%、次いで法事が31.4%でした。

つまり、地域住民にとって現在のお寺は、儀式、儀礼のための場所であり、ご門徒(檀家)さんに限定された閉鎖的なコミュニティーであることが考えらました。

そこで、お寺本来の役割であった地域住民の共有地(コモンズ)を再興することを目的に開かれたお寺として変化する取り組みをしたいと思いました。

問題の浮上

当寺のある生野区は在日コリアンの街として全国的に有名ですが、それ以外にも高齢者の多い街でもあります。

そこで、「健康寿命の延伸」をテーマにして、お寺本来のコモンズ(共有地)という場所の利点を活かそうと考えました。

超高齢化社会において、「健康寿命の延伸」は、老若男女を問わず全ての人々にとって普遍的なテーマです。

何故、若い人もなのか?

それは、私自身が20代の時に経験した理由もありますが、医療が発達し誰しもが”人生100年時代”だからです。

今後の社会において”健康管理””ヘルスケア”というリテラシ―は必須といっても過言ではありません。

そこを学んでおかなくては、50.60.70代に寝たきり生活になっても残り数十年をベッドの上で過ごすことになりかねません。

なってからでは遅い”予防が大事”なのです。

そしてさらに言えば、「高齢者が多いからその人たちだけ」というスタンスはお寺の存在意義にあてはまらないからです。

”老若男女問わず”という普遍性が仏教の教えですし、それがそのままお寺の存在意義です。

少し話が逸れましたが、お寺で「健康寿命の延伸」をテーマに活動することにより、誰もが今この瞬間の自分を大切にでき、その結果、”生まれた心の余裕を他者へお裾分けでき、より前向きな死生観あるいは人生観を抱くことができる機会を創出したい”と考えました。

ただ、私は僧侶として一応は仏教の専門家ではありますが、体の専門家ではありません。

たかが”トレーニング経験者”という立場だけでは参加者の信憑性はおろか安全性さえも確保出来なかったでしょう。

どうしようかと悩み一度はトレーニング専門の知識を得ようとも思いましたが、現実的にお寺の法務(事務)と並行することは難しかったので断念しました。

そんな時、高野氏と出会い板矢氏を紹介してもらいました。

ここからのメンバーとの関係性が生まれていくのですが、今回は割愛します。

プロジェクト始動

より前向きな死生観あるいは人生観を抱くためには、ココロもカラダも良い状態で他者との繋がりを感じられること(Well-Beingな状態)が重要であると考えています。

しかしながら、生活環境や様式の変化、あるいは加齢によりココロもカラダも衰え、他者との繋がりが希薄になり孤立する可能性があります。

そこで当寺を訪れる全ての人がどんな悩みでも相談できるココロへの施しと、衰え始めたカラダへの施し、そして人との繋がりを後押しする「100歳まで歩いて通えるお寺プロジェクト」を2021年4月から活動を開始しました。

メンバー

ざっくりとではありますが、ここでメンバーを紹介したいと思います。
(写真左より、嶋田さん・高野さん・石原・小林さん・板矢さん)

メンバーは僧侶石原(発起人・運営)

野崎徳洲会病院理学療法士 板矢 悠佑(発起人・運営)
 
大阪産業大学スポーツ健康学科助手 嶋田 愛(運営・ココカラYOGA講師)

株式会社CoCoRoN 代表 高野恭行(私と板矢氏を繋げてくれた人)

藤田 佳世(運営)

その他、大阪産業大学の学生さんにも時々お手伝いいただいております。

初期メンバーは上記5名ですが

2021年秋頃に生野区生野東にあるまちの保健室「陽の芽」代表であり産業医でもある小林知加子先生と出会いました。

100PJにご賛同いただき、プロジェクトへの参加・協力をしていただいております。

「陽の芽」の活動や小林先生については下記リンクよりご覧ください。

【まちの保健室 陽の芽】

プロジェクトの三本柱

今までプロジェクトに至る経緯と目的、メンバーを紹介しました。

では、このプロジェクトをどのように実践していくのか?

ここでは主に3つの活動についてご紹介したいと思います。

ココカラ相談所

この活動を始めた2021年4月当初はプロジェクト「100歳まで歩いて通えるお寺体操」として活動していました。

2022年より「ココカラ相談所」と名称を改め、来寺していただいた方へ以下の内容をお伝えし実践しております。

1. 歩くことの重要性
2. 筋力測定
3. お悩み相談
4. まち歩き

まず、歩くことの重要性は以下の点を科学的根拠に基づいてお伝えしています。

・1日に8,000歩以上歩く人は長生きする。
・歩くことで動脈硬化を抑制する。
・正しく歩くために必要な3つの要素。

これらを理解していただいたのち、実際に自分自身がどの程度”筋力があるのか?”ということを測定します。

この筋力測定により”自分のどこがよいのか?悪いのか?”がわかります。

つまり、体の問題点が浮き彫りになるわけです。

例えば、数年前の私ならば生活習慣による後背部のコリ、筋力測定の平均値を調べることによって同年代よりも筋力が不足していることによって姿勢が保たれていないなどです。

この問題点がわかったら次は”何故そのようになったのか?”ということでお悩み相談をします。

このお悩み相談は測定などをする前から”ご本人がよくわかっている”ケースも多いですが、測定によるデータと理学療法士の視点から、更に明確にしていく作業となります。

そして、自分の体のことををよく理解したうえで問題となる部位(膝・腰・肩)などをストレッチ或いは鍛える方法を”みんなで”やります。

この方法について「きつそう」「難しそう」というご意見もありますが、自宅であるもので簡単にできる方法ばかりです。

実際に参加していただいた膝に問題のある80代の女性でも出来ました。

このように、歩くこと(運動)の重要性を学んで理解し、測定によって自分の立ち位置を知り、問題解決に向けたストレッチやトレーニングをする。

そして最後に、これらのことを知っていただけたのであれば是非”外へ歩きに行こう”ということをしています。

時間帯的に夕飯の買い物をしにスーパーへいってもいいですし、「おいしいご飯屋さんがある」と案内してもいいし、お寺から参加者の帰路をみんなで歩いてみるのもいい。

このような外出をすることによって”まちを楽しむ””歩くことを楽しむ”という二重の効果が得られます。

以上、このような活動をしております。

ただし、”参加した以上絶対にしなければならない”ということはありません。

ただ、おしゃべり(悩み相談)をしに来るだけでもいいし、測定するだけでもいい。

強制はしないところがこの相談所の特徴でもあります。

なので、私たちも私服ですし身構えてスケジュール通りに遂行するという固さもありません(笑)

”気軽に行こう”

それがココカラ相談所です。

以下に、資料を添付しておりますので是非ご覧ください。

ココカラYOGA

ココカラYOGAは運営スタッフの嶋田さんに月2回ペースでお願いしています。

嶋田さんは大阪産業大学においてスポーツ指導や研究、心臓病患者さん向けのトレーニング「いきいきハートクラブ」を理学療法士の板矢さんとされています。

スポーツ指導のプロなので参加者さんからも安心のお声を頂戴しております。

ところで、YOGAという名前を聞いて皆さんはどのようなイメージを持たれますか?

YOGAとえば、古代インド発祥の伝統的な宗教的行法(修行法)で瞑想を主としていましたが、現代においては身体的エクササイズも含まれます。

このような観点から「難しそう」というイメージがありますが、現代においては色々と派生されたものがあります。

例えば、最近よく聞く"ホットヨガ"”マインドフルネス”などがそうです。

ココカラYOGAは主に”ストレッチ”をメインとしていますので、誰でも簡単にできます。(本当です)

こちらの活動では、地域の方やご門徒(檀家)さんとそのご家族が参加してくれています。

私としては家事、育児、仕事の合間にフラッと寄れる環境を心がけています。

嶋田さん自身も「”あそこに行けば誰かいてる”という場所を作りたい」という思いです。

「YOGAは気になるけどスタジオに行くにはちょっと」「体が硬くて凝っている」「ストレスが溜まってるからリフレッシュしたい」と思われた方、是非ご参加ください。

基本的に予約なしでも大丈夫ですが、下記に予約フォームのリンクを貼っておきます。

大阪府看護協会「まちの保健室」

こちらの主催は”大阪府看護協会”という保健師・助産師・看護師・准看護師によって構成されている団体です。

1947年7月に1,431名の会員で発足し、2012年4月公益社団法人となり、現在では50,000名を超える会員数です。

府民の皆さまによりよい看護を提供するために、看護職の質の向上に努め、府民の保健医療福祉の向上に貢献するという目的を持っています。

その協会さんが「まちの保健室」を当寺で開催、プロジェクト協力してくれる事になったのです。

まちの保健室については、協会HPより以下引用

病院へ行くほどではないけれど、最近ちょっと気になることがある。学校や家庭のことで、ひとりで悩んでいることがある。

家での療養生活のことでアドバイスがほしい、など。

生徒の相談や癒しの場でもある学校の保健室のように、さまざまな不安や悩みを看護職に気軽に相談できる場所、それが「まちの保健室」です。

また、こころとからだの健康相談だけでなく、健康情報の提供や健康学習の支援、そしてコミュニケーションの場やネットワークづくりの場としてもご利用いただけます。

専門的な知識をもった看護職が、あなたの身になって、適切なアドバイスや手助けを行います。

こどもからお年寄りまで、誰もがより健やかに生きるために、人と人がふれあい、より豊かな人生を楽しめるように。

「まちの保健室」はいつでもあなたをお待ちしています。【相談は無料です】 以上。

このように100PJの意向と完全に添う活動でしたので2021年末に要請をしたところ、協力していただけるようになりました。

【活動日時】

毎月第一月曜日14時~16時 本堂

【相談内容】

血圧・体脂肪・握力測定・生活習慣病・介護予防相談・看護介護相談等
子供の身長体重測定・妊娠出産育児相談等

幅広く専門家が対応してくれますので安心してご参加ください。

協会さんについては下記リンクよりご覧ください。

これまでの実績

冒頭でも書きましたが、緊急事態宣言中にも関わらず当寺本堂において9回開催し計17名のご参加でした。

個人的に興味があったのは参加者のほとんどが”ご門徒(檀家)さん以外の地域の方”ということです。

アンケート結果からもわかるように、現代人のお寺のイメージは葬儀や法事などの”仏事をするだけの場所”というイメージが強いです。

実際に100PJをするにあたって広報のためチラシを作り配りましたが「なぜお寺で?」というご意見が多くありました。

それにも関わらず、ご参加いただいた背景にはやはり”健康に対する関心”と”地域に開かれた場所”というところではないでしょうか。

それらをより深く理解すべく、昨年11月に生野区内にあるもと鶴橋中学校にて行われた「みんなの文化祭」へ出展させていただきました。

文化祭は2日行われましたが合計3000名以上もの方が来場されたそうです。

100PJの参加者もこの日だけで20名ほど来ていただけました。

もと中学校の保健室を借りて、学生時代に体験した「体力測定」をベースに皆でワイワイやりながら自分自身の体のことを知ってもらえる機会になったように思います。

それだけでなく地域の皆様へ100PJが周知できたのではないかと考えて、また新たに企画を考えております。

文化祭の様子は下記リンクよりご覧いただけます。

【みんなの文化祭2021レポート】

まとめ

以上、長文となりましたが100PJについて書きました。

1 ココカラ相談所(理学療法士)
2 ココカラYOGA(スポーツ系大学教員)
3 まちの保健室(大阪府看護協会)

2022年はこの3つの活動をベースに健康寿命延伸と地域に開かれた場所を目指します。

1人でも多くの地域の方々が、古来よりコモンズ(共有地)として機能してきたお寺で「ココロもカラダも良い状態で人との繋がりを実感できる状態」へ近づき、新たなコミュニティを作れるようお力になれればと思います。

生野lover、ヘルスケア、健康体操、居場所、コミュニティ、まち作り、お寺に興味関心のある方、是非ご参加ください。

「ココカラ相談所」
毎月土曜日15時~17時

「ココカラYOGA」
毎月二回土曜日(1回45分/計3~4回)

「まちの保健室」
毎月第一月曜日 14時~16時

100PJに関するお問い合わせは下記リンクより

【お問い合わせ】

投稿者プロフィール

石原 政洋
石原 政洋住職
高校在学中に仏道へと入門し、早17年以上携わっております。当寺ではあらゆる角度から仏教の素晴らしさをお伝えするとともに、仏教伝来より培われてきた伝統文化と健康を共有する「体験型」寺院を目指し活動しております。ライフスタイルの多様化により、葬送や納骨などの形式が変化している近年です。終活に関するご相談も随時承っておりますので、お気軽にご相談ください。