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まちと生きるお寺を目指して

 

皆さま更新が滞っておりまして申し訳ありません。
10月の報恩講以降、当寺庫裡改修工事をしておりました。
今日はその一部始終をお伝えし、そもそも改修工事のきっかけとなったのは、一階応接室の雨漏りが原因でした。隣家と当寺の隙間から雨水が壁をつたい床下部分を侵食しておりました。壁板を剥がすと土壁がこぼれ落ちて空洞ができ、雨水が溜まっているという悲惨さでした。(写真左)

すると施工業者さんより、「床下の基礎部分にまで影響があるかもしれない」とのご指摘がありまして、住職として見過ごす訳にもいきませんので、直ぐに手配したのですが、判断は正しかった。
床板を剥がしてみたら、地面の上にただブロックを積み、さらにその上につぎはぎの基礎。これでよく「80年も保ったなぁ」と逆に感心してしまいました。正直、ここまで工事するならまとめてしてしまおうと雨漏り修理から庫裡リフォームへと大幅に予定を変更をした訳です。(写真右)

こうして壁、床、そして天井の内装をすべて剥がし本格的な改修工事がはじまったのですが、マイナス面だけではなく、思わぬ発見もありました。

応接室 天井部分

昭和世代の方ならお分かりかと思いますが、天井の丸太部分に白いものがついております。これ「ガイシ」と言って電線を巻いて留める器具なんですよね。個人的には、昭和レトロ感があって好きなのですが、さすがにこのままにする訳にも行きませんので天井板を貼ります。(残念)

お寺はサードプレイスとなるか?

 「サードプレイス」という言葉をご存じでしょうか?アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグという人が提唱した言葉ですが、直訳すると「第3の居場所」という意味になります。
いったい何が第三なのか?と申しますと、まず、第1の場所が「家」第2の場所が「職場・学校」となります。要するに自分自身が日常生活の中で長い時間を過ごす場所ということです。
 そして、第3の居場所とは、家や職場へ行く前・帰る前に軽い息抜きができる場所、リフレッシュや新たなやる気を生む交流のある場所となります。ストレス社会だからこそ潤滑油のような場所が必要だとオルデンバーグは訴えていたのです。
 物珍しい言葉を使っておりますが、皆さま既に自分だけのサードプレイスを既にお持ちなのではないでしょうか?例えば、幸教寺のある生野区は昔ながらの喫茶店が多いのですが、喫茶店(カフェ)は文化に根付いたサードプレイス(息抜き)といえます。また、老人憩の家や各会館、コミュニティセンター、町会なども該当します。ただ、問題なのは人と会うことによって息抜きはできますが、新たなやる気を生む場所という機能はまだまだクリアできていないということです。
 やる気を生む場所というのは何も若者や現役世代に限った話ではありません。いろいろな挑戦をすることにより孤独死や認知症予防などを防ぐ効果も期待されております。当寺は10月上旬より庫裡の改装工事をはじめました。その理由は2つございます。
 1つは、庫裡の老朽化です。細かいところをいえばキリがありませんが、簡単にいうと天井から壁をつたい雨水が浸み込んでいる所が2ヶ所。床の傾きや凹みが4カ所です。目視する限りこのような現状ですので、実際に壁や床を剥がした時には相当傷みがあることは想像できます。ですので点検整備も兼ね、尚且つ修繕も必要ならば改装しかないと思ったわけです。
 そして2つ目が本題となりますが、ずばり【お寺はサードプレイスとなるか】です。突拍子もないことを言っているようですが、実はお寺は古来よりその村々のサードプレイスとしての役割を担ってきました。農民で例えるなら朝早くから農作業をはじめ、お寺の鐘が鳴るとそれが休憩の合図になります。鐘が鳴ったお寺では勤行が始まり、皆で手を合わす。終われば村人が集まっている訳ですから必然的に「息抜きができる場所」となります。さらに面白いのが、村人にはそれぞれ特技があったということです。ある人はモノづくり、ある人は曲芸、ある人は計算など、特定の場所(お寺)に色々な人が集まると、各個人の特技や趣味を見せる、或いは披露する場所が生まれます。それはやがて縁日という形でお祭りが催されるようになり、村人の娯楽にもなっていたのです。
 このように、お寺は癒しや息抜きとしての場だけでなく、新たな体験を皆で生み出し共有する【サードプレイス】だったのです。現代においては様々な施設ができ、お寺がサードプレイスとしての機能は薄れてしまいましたが、私は今でもお寺が地域のサードプレイスとして機能すると信じております。
 そのような訳で、長くなってしまいましたが、お寺の一部をご門徒様へのサードプレイスとしてご利用いただくための場所づくりをいたします。幸教寺は皆様の息抜きと新たなやる気を生む場所となります。。

投稿者プロフィール

石原 政洋
石原 政洋住職
高校在学中に仏道へと入門し、早17年以上携わっております。当寺ではあらゆる角度から仏教の素晴らしさをお伝えするとともに、仏教伝来より培われてきた伝統文化と健康を共有する「体験型」寺院を目指し活動しております。ライフスタイルの多様化により、葬送や納骨などの形式が変化している近年です。終活に関するご相談も随時承っておりますので、お気軽にご相談ください。